■　後立山縦走登山の動機

去年、2007年9月剱岳登山した折、別山乗越から剱御前の山腹を通るコースを下りながら右手に後立山連峰が連なって、一際端正な姿の鹿島槍岳が見えてきました。それから下山するまで見え隠れした五竜〜鹿島槍が強く私の印象に残りました。

それまでも鹿島槍と五竜はいずれ登りたいという気持ちは漫然と持っていました。ただ縦走は八峰キレットという険しく困難なハードルが立ちはだかっていて、容易に行けそうもなかったので、それぞれに登ろうと思っていました。

ところが2007年に憧れの剱岳登山が出来たことで、八峰キレットでも私達の力で登れるのではないかと思うようになりました。2008年になって今年の遠征登山をどこにしようかと考えた末、八方尾根から五竜〜鹿島槍〜扇沢を思い切って縦走しようと決めました。

■　後立山縦走登山を終えて

八方尾根から五竜〜鹿島槍〜扇沢の縦走を終えて、結論から言えば、私の数十年の登山歴の中で、最も過酷で最も困難な山行でした。定量的に言えば、剱岳登山を3〜4回続けて登ったのと同じくらいの感じでしょうか。それだけに一生忘れられない登山となりました。

今回もラッキーだったのは、前夜まで悪かった天候が縦走を始めた日から連日晴天に恵まれたことです。そのお陰で事故にも遭わず予定通り実行出来たものと思います。更に雲上のご来光を2日共見ることが出来、遠望を含めた高山の感動的な絶景、そして多種多様な高山植物の美しい花たちに巡り逢えたことです。

山中での色々な登山者との今回の出会いも忘れられない貴重な思い出になりました。単独行が初めてと言っていた逆縦走中の若い女性、猿倉から上って縦走してきたという私達と同年輩のタフな夫婦、そして鹿島槍岳山頂で百名山達成!!と絶叫された元気なおばあちゃん、一期一会の出会いとはいえ、心に残る人達でした。

全コースを通して登山道が奇麗に整備されているのが印象に残りました。特に八方尾根、それと種池山荘から扇沢までのコースは本当に素晴らしかったです。たえず保全作業に携わっている山小屋の献身的な係りの方々に感謝の気持ちで一杯です。

最後に、今回の雲上の旅と言ってもいい、縦走を成し遂げた妻と私の元気でタフな身体に、心からありがとうと言いたいです。